柳に小野道風(1)

 柳の20点札。雨が降るなか、柳の枝に飛びつく蛙の様子を眺める小野道風

小野道風は、本朝名誉の能書なり。わかゝりしとき手をまなべども、進まざることをいとひ、後園に躊躇けるに、蟇の泉水のほとりの枝垂たる柳にとびあがらんとしけれどもとゞかざりけるが、次第々々に高く飛で、後には終に柳の枝にうつりけり。道風是より芸のつとむるにある事をしり、学でやまず、其名今に高くなりぬ。

(三浦梅園『梅園叢書』上巻)
 「三蹟」の一人に数えられる道風も、若い頃には書がなかなか上達せずに伸び悩んでいました。そんなある日、蛙が柳の枝に飛びかかろうと何度も挑戦してついには枝に移ったのを見て発奮し、たゆまざる努力の末に名人になれた、という教訓話花札の図柄の典拠として有名なエピソードですが、意外なことに、古い文献には見当たらず、比較的新しく成立した説話のようです。