幼名

 司馬相如は幼名を「犬子」といい、揚雄の子は「童烏」、王彭之・王彪之の兄弟は「虎豚」「虎犢」・・・(陸亀蒙『小名録』、『説郛』所収)
 昨日の話の続きですけど、幼名として動植物や賤しい名をつけるという風習が日本や中国にあります(『沙石集』の例もそれでしょうか)。以前どこかで読んだ民俗学の側の説(論者・論文名は完全に失念しましたが)では、幼児の死亡率が高かった前近代において、悪鬼の所業がその死因の一つであると普通に信じられていた。そこで、そのような幽鬼に目を付けられないように、取るに足らない存在であるという印としてそういう珍名をつけるようになった、とのことでした。
 大変興味深い考えですし、当時の人々が文字通りの「病魔」を我々より遥かにリアルに捉えていたことは間違いないのでしょうけど、どうでしょうね。
 ところで、古代日本の人名に十二支の動物名にちなんだものが非常に多いことについては岸俊男氏「十二支と古代人名――籍帳記載年齢考――」(『日本古代籍帳の研究』)による検証を参照。