きんくら・Square Calligraphy・徐冰

 普段は眉を顰めて眺めている(欧米、そして我が国のごく一部の論文の題目に見られる)「三題噺」的なタイトルに敢えてしてみました。いいのです、酔っぱらっているから。でも、なかなかキレイな連想だよ。
 今日呑んだ岩手の地ビール、「きんくら」「あかくら」「くろくら」のデザインが素晴らしい(いわて蔵ビール きんくら(金蔵) 350ml缶 いわて蔵ビール(地ビール) 世嬉の一酒造)。「金蔵」「赤蔵」「黒蔵」という二字が一体化するにあたって見事に「蔵」のくさかんむりとオーバーラップしている。

 それだけではなく、蔵の「臣」の部分は KURA になっており、ただちに想起されるのは、先日も言及した、Square Calligraphy です。


 そして、この運動を主導した Xu Bing(徐冰)氏は、新刊書『東アジアにおける〈書の美学〉の伝統と変容』(三元社)所収論文、劉悦笛氏「現代中国における書の実験――徐冰の作品を例として」にたまたまとりあげられていたのです。なんたる偶然。
東アジアにおける〈書の美学〉の伝統と変容

東アジアにおける〈書の美学〉の伝統と変容


 おかげで徐冰氏のひととなりと代表作について知ることができました。
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・・・《天書》の文字は、西夏文字の造形規則を想起させるものの、その文字がもつ意味は一切失われている。つまり、《天書》に用いられている文字は内容のない形だけのもので、誕生と同時に文字としての活力を失った文字といえる。《天書》は、そうした疑似宋朝体の文字を用いることで、天から降ってきた読解不可能な書物を表現しているのだ。
 徐冰が疑似宋朝体を選んだ理由は、その書体に何の様式も個性もないからである。この創案は、書の本質に逆らう傾向を示している。彼は4,000を超える版木を作成し、それを広範に繰り返し刷ることで、印象的な作品をつくり出した。

(前掲論文153、155頁)
 On View Now | Back to the Future: Xu Bing, “The Living Word,” and the Legacy of 1989 | Art21 Magazine

《生きた文字(The Living Word)》(図3)は中国において注目されている作品で、象形文字、篆書、隷書、楷書、簡体字などそれぞれ異なるフォントを用いた430もの「鳥」の漢字で構成されている。「鳥」のかたちを最も抽象化した文字は地面の端に固定化されている一方、絵画的に捉えた図像は天空へと飛び立ち、天井に向かって螺旋を描きながら外へと舞い上がってゆく。

(前掲論文161頁)