モノが動かなくなる日

 船や飛行機を女性の三人称で呼び、車や機器にヒトのように名前を与えて、普段と挙動が異なるときは、どうしたんだお前調子悪いのか?と撫でつついたわり、オレらが切羽詰まっているときは少しイライラしながらも、がんばれ頼むよと励まし、それでもいよいよダメなときは、このままお前を見捨てるわけにはいかない、お前を付喪神にするわけにはいかないと半泣きになり、冷静に考えればそれは愚かなことではあるが、長いことオレに尽くしてくれたのだから、一緒に苦楽をともにしたのだから、そういう大切な大切なお前なのだから、今、オレは、途方に暮れている。
 オレに人麻呂並みの歌才があったら、そういった趣旨の挽歌を作れるのに。