日本書誌学大系『増訂 新編蔵書印譜 上 【ア〜ソ】』

 『新編蔵書印譜』の増訂版が刊行されました。篆刻はロクに読めないくせにハンコが好きなので、楽しく拝見しています。
日本書誌学大系 増訂 103−1 新編蔵書印譜 上 ア−ソの通販/渡辺 守邦/後藤 憲二 - 紙の本:honto本の通販ストア

一、旧版はA4判一冊であったが、今回A5に改め、構成は、上巻(ア-ソ)、中巻(タ-ワ・所有者不明)・下巻(総索引)の三分冊とした。
一、旧版以後成し得た改訂増補は約八〇〇件にのぼる。
一、原色、原寸大、所有者の五十音排列、また物故者を対象としたことは旧版同様。
(以下略)

(凡例)
 「八〇〇件」の改訂増補があるということですから、旧版と比較するといろいろと楽しいのでしょうけど、残念ながら旧版は手元になく・・・。それでもパラパラと覗いていると、ごく最近お亡くなりになった方々の印影もあって驚きます。

(100頁)

(327頁)
 まだ記憶に新しいところです。当然のことながら、『近代蔵書印譜 第五編』(2007年刊)にも収録されていないわけですね。そのような最近の例ということでいえば、ほかにも下垣内和人(平成24年。481頁)、鈴木勝忠(平成24年。515頁)、大野晋(平成20年。179頁)、雲英末雄(平成20年。337頁)、桜井武次郎(平成19年。434頁)諸氏の蔵書印は、おそらくは今まで公に目にする機会はあまりなかったということでしょう。
 ところで、つらつら拝見していて、印とは関係ないですけど、思い出したことがありまして、

(279頁)号は「李莽湖」なのか「李莽古」なのか、結局どちらでもいいんでしたっけ?ちゃんとフォローしていないので、わからないのですけど。
 あと、よくわからないことといえば、なぜ「久世家」(くぜけ)があの位置(530頁。配列としては「せ」の箇所)にあるのでしょうか・・・?
 さて、その「せ」のところでいえば、関根俊雄氏の蔵書印は以下の通り。

(528頁)「いずれは公共のために」でしょうか?
 たしかに、個人の蔵書は、いずれ散逸する運命にしかありません。それでも、

私なども、ずつと前に、どうせいつかは散ずるものであるから、私が蔵書印を作るなら、初から曽蔵などと雕らせようと考へてゐたこともあるが、已に先輩があるのである。その最も有名な例は、本邦にも旧蔵書が往々伝来してゐるが、清の李馥の蔵印に「曽在李鹿山家」とあり、此印文が讖をなして、李家は振はず、群書が散佚したといふ、支那流の話がある(文芸雑誌第一号)。

長沢規矩也「蔵書印の話」、『長沢規矩也著作集 第六巻』44〜45頁。初出、1936年)