古い字謎の詩、孔融「郡姓名字詩」

 古代中国の字謎といえば、曹操の、例の「黄絹」云々が有名ですが、同時代の孔融に離合の技巧を極めた詩があって、完成度自体はこちらの方が高い。

漁父屈節、水潜匿方。
与時進止、出行弛張。
呂公磯釣、闔口渭旁。
九域有聖、無土不王。
好是正直、女回于匡。
海外有截、隼逝鷹揚。
六翮不奮、羽儀未彰。
龍虵之蟄、俾也可忘。
玟琁隠曜、美玉韜光。
無名無誉、放言深蔵。
按轡安行、誰謂路長。

(『芸文類聚』巻56「離合郡姓名詩」。ただし、幾つかの字は『古文苑』巻8・兪紹初輯校『建安七子集』を参照して改めた)
 全部で十一句。第九句「玟琁隠曜、美玉韜光」を除いて、あとは二句で一字を表わします。
 結局これは全体で「魯国孔融文挙」、つまり自らの出身地と本名・字になるわけですが、詳細は『古文苑』(『建安七子集』)の割注を参照してください。