半村良『産霊山秘録』

id:hokuto-hei さんが紹介してくださって(2004-03-31)、かなり気になっていた一冊。*1
それにしても、本との巡りあわせというのは不思議です。書店・古書店巡りが趣味だという方なら理解していただけると思うのですが、普段から本屋通いをしていると、その陰徳(?)で、「これ読みたいなぁ」という書籍がふっと眼前に現われたりするものでして。「本が向こうからやって来る」といった感覚でしょうか。
この『産霊山秘録』も長らく絶版でしたが、つい先月末に集英社文庫より復刊されました。読みたい本が向こうからやって来たわけです。

半村良『産霊山秘録』(集英社 2005年)

まだ2章(「真説・本能寺」)までしかまだ読んでいませんが、いやはや。

山科家は内蔵頭や御厨子別当世襲しているほかにもうひとつ、すべての公式文書の埒外にある奇妙な役をうけついでいた。
ヒの司、である。
ヒは日とも、卑、非ともいう。禁中では異の者と呼ぶならわしであるとも聞いている。どのような人間か今では誰も見た者もなく、ただ漠とした言い伝えが残っているにすぎないが、ヒは遥か遠い御代からあって、皇室の危機を幾たびも救ったことがあるらしい。
遠い昔、ヒは皇室のさらにその上に位したという説がある。そのためにあらゆる氏姓を拒否し、ヒとのみとなえて世にかくれすんでいるのだ。しかし一朝皇統の命運がかかる時は、どこからともなくあらわれてその存続に力を尽くすといわれている。

ここに出てきているのは、山科言継なのですが、適役かも。
このヒの民というのは、高皇産霊神の直系と自称し、テレポーテーションを駆使する一族・・・とまあ、その活躍については本を読んでもらうとして、それにしても、なぜ我々は、かくも「秘密組織」に惹かれるのか。
ビッグコミックオリジナル』に連載中の『イリヤッド 入矢堂見聞録』でも、アトランティスの謎を解明しようとする連中を殺して回る「山の老人」という暗殺集団が出てきますし。

*1:日本のSFは、ほとんど読まないので全くの無知