2013年、今年読んだ知的向上心をかきたてる本10冊

 今週のお題「2013年に買って良かったもの」
 2012年、今年読んだ知的向上心をかきたてる本5冊 - Cask Strength2011年、今年読んだ知的向上心をかきたてる本5冊 - Cask Strength2010年、今年読んだ知的向上心をかきたてる本5冊 - Cask Strengthと、シリーズ化した企画ですけど、今年は諸事多忙でコメントを書く時間がありません・・・orz(単に忘年会シーズンに入ったからだろ、という的確なつっこみはこの際ご容赦願うということで)
 なので、コメントは簡潔で、かわりに冊数が「倍返し」ということで許してください(来年以降もこのスタイルで行くかも)。
 毎年恒例の約束事:紹介する本は順不同(要するに、部屋のなかで手にとった順)。そして、ガチガチの学術系論文集、校注書、影印本等は敢えて除外しました。なので、『中世日本の宗教テクスト体系』や『国語文字・表記史の研究』や『論語義疏の研究』等々が入ってないじゃないか!といった類の御批判は、いつものように甘受いたします。

目録学発微: 中国文献分類法 (東洋文庫)

目録学発微: 中国文献分類法 (東洋文庫)

 『古書通例』(『古籍校読法』 asin:4582807755)に続いての、余嘉錫の著作の全訳。「本書には多くの引用資料が含まれる。すでに邦訳のある文献についても、訳本によらず新たに訳出した」(凡例3〜4頁)これが大変ありがたい。
表紙裏の書誌学

表紙裏の書誌学

 私が持っている和本にも、反故紙を使用していて裏にわずかに字が透けて見えるものがあるのですよ。でも、怖くて剥ぎ取ることはできませんが! 大部の事典や叢書を所有してそれを応接間の本棚に陳列するのがステータス、という時代は、もう来ないのでしょうか。 これを読むと、美術館ではなくて、礼拝堂や修道院に行きたくなりますね。
よみがえる古文書―敦煌遺書 (敦煌歴史文化絵巻)

よみがえる古文書―敦煌遺書 (敦煌歴史文化絵巻)

 神田喜一郎敦煌学五十年』や王重民『敦煌古籍叙録』を読んだことがある方にとっては目新しいものはあまりないでしょうけど、コンパクトに手際よくまとまっていますし、全編カラー印刷です(写真が小さいのが難点)。
漢文資料を読む (日本語ライブラリー)

漢文資料を読む (日本語ライブラリー)

 第15講「ヲコト点で読む」がなんといっても本書の圧巻。この部分をさらに拡充した教材を作るべきではないでしょうか。白状しますけど、私はヲコト点をよむ訓練をちゃんと受けていないので、近い将来、金剛寺本遊仙窟の某影印翻刻本のような、ちょっと困ったことをしでかすのではないかと戦々恐々としています。(本書にもちょっと問題のある個所がありますが)

徐世栄著『古漢語反訓集釈』(安徽教育出版社、1989年)

 新刊ではありませんし、中文書ですけど、いわゆる「反訓」(相反する語義を持つ漢字。「乱」に「みだれる」と「おさめる」の意がある、というのがいつも引き合いに出される)を集大成して訓詁を明らかにした便利な辞典で、類書が他に思いつかず、某所でのネタ探しに大いに役に立ちました。

 ある出版記念会に係る立食パーティーの席で、一人の高齢の研究者が歩み寄ってきた。挨拶を交わしてみると、その気品に満ちた方は、何と誰もが知る著名な近代史の専門家であった。聞けば、その二年前、私が某シンポジウムで漢文訓読体に現われる「すでにして」という言い回しに注意を促し、「すでに」の強調表現ではなく、「まもなく、しばらくすると」の意に解するのが正しいと言ったことについて、わざわざ礼を述べに来てくださったのだった。曰く「先日、ある読書会で明治天皇に関する文献を読んでいたとき、〈すでにして〉が出てきましたが、おかげさまで、すぐに〈まもなく、しばらくすると〉の意味だとわかり、すんなり解釈できました」と。
 これは大きな衝撃だった。門外漢の私でも芳名を耳にしている老大家が、漢文脈における「すでにして」の意味を知らなかったというのだから。

(『本郷』第107号、12頁)

白文攻略 漢文法ひとり学び

白文攻略 漢文法ひとり学び

 本書をお持ちでない方は、少なくとも「常用漢字漢語用法略解」(157〜204頁)はコピーしておくべきです。
中国書道の至宝: 書と人をめぐる三千年の物語

中国書道の至宝: 書と人をめぐる三千年の物語