『和訳蒙求』(※追記があります)

 国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2015年1月) - 2sc1815jの日記によって、2015年1月に館内公開からインターネット公開(保護期間満了)に変更された資料が3296件にのぼることを知りました。
 その一覧表をつらつら眺めていたところ、終わりの方に『和訳蒙求』の書名が。
 和訳蒙求 - 国立国会図書館デジタルコレクション
 一見すると『蒙求』の翻訳であるかのような書名ですが、さにあらず。実は源光行『蒙求和歌』の校訂本なのです。これは池田利夫氏『日中比較文学の基礎研究』(笠間書院、1974年)第五章「蒙求和歌の伝本系統と諸本」(初出、1968年)に紹介されている本ですが、今まで見る機会がなかったので、このたびの処置は嬉しい。

また、この第二類本の活字本には、ほかに明治四十四年に発行された「和訳蒙求」と題する単行本があり、これはやはり国会甲本を底本にしたものである。

(192頁)他の活字本は、もちろん、続群書類従所収本です。また、「国会甲本」というのはいわゆる「慈鎮真跡」本でして、こちらは以前よりインターネット公開されています。
 蒙求和歌 14巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
 この本の影印は『附音増広古注蒙求 蒙求和歌』(中文出版社、1973年)で見られるのですが・・・

御覧のように、とても閲覧にたえられるものではなかったので(たとえば http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2570135/5 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2570135/6 と見比べればわかるように、この影印本では付箋の裏の字が全く読めない)、こういった貴重書の公開は本当にありがたいですね。
 で、この『和訳蒙求』ですが、原本の片仮名を全て平仮名に直し、適宜漢字を宛て、句読点・濁点を付し、しかも他本との校異を示さずに本文を改めている(たとえば、「国会甲本」は「漢祖龍顔」末尾の和歌を欠いていますが、『和訳蒙求』はそれを他本から補っています)ので、学術的に利用することはできませんが、読みづらい本文が通読しやすくなっているのは大きな利点です。
【追記】

 私が勘違いしていたのですが、今までも『和訳蒙求』はネットで公開されていたのですが、「文化庁長官裁定」から晴れて「保護期間満了」に移行したということなのですね。確かに当該ブログ本文を読めば、そのように受け取るのが自然でした。その点、お詫びして訂正いたします。