国語便覧

 机上に備えている便覧で一番小さいものは吉川弘文館が毎年出している『歴史手帳』、一番大きいものは『読史備要』です(これは大き過ぎて、果たして便覧と呼べるのかどうか)。便覧好きなんですよw 内容が重なっていてもお構いなしです。
 便覧といえば、ちょっとした調べ物に役立つ小冊子というイメージが強く、まあ実際にそういう性格の書なのですが、それ以上の意味もあると思います。細分化・専門化し過ぎた現代の(人文・社会・自然)科学の分野において、事象を総合的に把握する必要性がますます高まっているなか、古今東西の事象を一覧する方法としては、例えば岩波の『日本文化総合年表』(これも座右)のような「年表」がありました。年表も便覧の一種ではありますが、学問の成果を広い視野のもとで見渡し、新たな側面から文化を捉えなおす可能性を便覧は持っています。その点で、便覧の編集はもっといろいろと野心的に試行錯誤されていい、一見使いづらそうでも斬新な構成を持つものがあっていいと思いますが。
 偉そうなゴタクを並べましたが、要は新しい便覧を入手したという、その前置きですw

原色シグマ新国語便覧―ビジュアル資料 (シグマベスト)

原色シグマ新国語便覧―ビジュアル資料 (シグマベスト)

 高校用の教材でしょうか。カラー図版がいいですね。
 パラパラめくっていると、160-161頁は「歌枕地図」。「歌枕とは、古来、和歌の中に多く詠みこまれた地名のことである。(中略)古歌を背景として美的連想をさそう名所――歌材として最もふさわしいもの――として意識されるようになる」という説明文があるのですが、地図を見ると、「熟田津」(にきたつ)なんてのが歌枕になっていまして、説明に反するものを挙げるのはいかがなものか。72-73頁に「万葉集地図」があるのだから、それで十分。「高千穂の峰」や「走水」や「新治」などというものもあって、こんなのは歌枕ではありません。