月(週)に一度のはずだった逢瀬

 祖父の体調が思わしくなく、今年はその快癒を祈ります・・・
 恒例の七夕ネタです。

御伽草子集 (1980年) (新潮日本古典集成)

御伽草子集 (1980年) (新潮日本古典集成)

 「しかるべきにこそあるらめ、もとのやうに住み逢はんことは月に一度ぞ」と言ひけるを、女房悪しく聞きて、「年に一度とおほせらるるか」と言へば、「さらば年に一度ぞ」とて、苽をもちて、投げ打ちに打ちたりけるが、天の川となりて、七夕、彦星とて、年に一度、七月七日に逢ふなり。

(ベルリン国立博物館蔵『天稚彦草子』)
 女の親(である鬼)が出す無理難題を全て解決したために親は遂に交際を認めて、月に一回逢うことを認めますが、女がそれを聞きそこなったために年に一度になった、という七夕の起源を説明します。
 聞き間違いによって一年に一度の逢瀬になってしまうという話型は、いわゆる昔話の「天人女房」と同じ型ですが、昔話のほうでは妻が七日ごとに会おうというのを夫が七月七日と聞き違えるというのが普通です。
 この聞き損ないという物語の展開がなぜ必要なのか、判然としませんが、ひょっとすると唐土にもそういう七夕説話が派生していたのかもしれません。わたしは検出できませんでしたが。
 まあ、夫婦だとしても月(あるいは週)に一回の逢瀬程度では悲恋とは言わないのかな・・・