地震用心の歌


(source: http://rarebook.ndl.go.jp/pre/servlet/pre_ni_koma.jsp;jsessionid=C2DD80AEF819845013FAB5E406357CEF
 「地震用心の歌」は物名歌五首で構成される錦絵で、それぞれの歌に十個の物が詠み込まれている、大変技巧的な作品です。昔の避難所生活の様子も描かれていて興味深かったので、ご紹介いたします。

魚の名十/さはかしきなますふりふりうこひたら/はやくいなせよふかきささはら/鳥の名十/何ときもきしかなく日はうかりすな/藪へかけとひさきへすすめよ/虫の名十/あふなくもけかありしてふきいてだに/身にのみしみていとどかなしき/草の名十/ゆりやんでついにはよしときくとても/つたなきとこにしばしねむらん/木の名十/つきひすきやむかやと気を/もみきりぬまつももどかし地震なき日を

 以下、濁点を付したり漢字を宛てたりして読みやすくしました。括弧内は詠み込まれている物の名です。

  • 騒がしき 鯰振り振り 動ひたら 早くいなせよ 深き笹原(【魚】鯖・かじき・鯰・鰤・鯉・鱈・はや・いな・ふか・鰆)
  • 何時も 雉が鳴く日は うかりすな 藪へ駆け飛び 先へ進めよ(【鳥】とき・雉・鵞・くい・鵜・雁・鶏(かけ)・とび・さぎ・雀)
  • 危なくも 怪我ありしてふ 聞いてだに 身にのみ沁みて いとど悲しき(【虫】あぶ・蜘蛛・蛾・蟻・蝶・だに・のみ・紙魚(しみ)・いとど(今のかまどうまのこと)・蚊)
  • 揺りやんで 遂にはよしと 聞くとても つたなき床に しばし眠らん(【草】百合・藺(い)・よし・菊・藻・つた・菜・芝・ねむ・蘭)
  • 月日過ぎ やむかやと気を 揉みきりぬ 待つももどかし 地震なき日を(【木】つき・檜・杉・かや・もみ・桐・松・桃・かし・なぎ)