中田祝夫氏「国語史料探訪十則――わたしの研究の足跡と目的――」

 最近twitterで『中田祝夫退休自祝記念誌 聊以録』(勉誠社、1978年)が話題になっていました。



 『聊以録』の「聊以」は陶淵明の詩句「聊以永今朝」(「己酉歳九月九日」)に由来すること、中田氏ご本人が冒頭で述べています(1頁)。私もこの詩は好きです。
 それはそうと、架蔵本は中田氏が某氏に献呈したものなのですが、一緒に「最終講義(案) (題目)国語史料探訪十則――わたしの研究の足跡と目的――」と題する小冊子も挟まれていました(本文14頁。図版11枚)。最終講義の際のレジュメだったと思しきものです。

(「携帯品……当日はなるべく『中田祝夫退休自祝記念誌・聊以録』(献呈品)をご持参下さい」w)

このノートは、風間書房の厚意による印刷
であります。ただし、図版の部は勉誠社
援助をいただきました。
  昭和五十四年己未如月下澣
     中田祝夫


最後には、最終講義の模様を伝える新聞記事切り抜きのコピーが貼りつけてありました。
 なかなか珍しい資料だと思うので、「十則」の題目を書きだしておきますね。

  • 一則 仮名書き観無量寿経阿弥陀経
  • 二則 足利本仮名書き法華経
  • 三則 応永二十七年本論語抄(五巻) 人天眼目抄(足利本二巻・文明本八巻)
  • 四則 四河入海 玉塵抄
  • 五則 文明本節用集など「古辞書大系」
  • 六則 「三河物語」(付)「武者詞」
  • 七則 東大寺諷誦文稿
  • 八則 日本霊異記
  • 九則 訓点本の新資料探訪(付)ヲコト点系統論
  • 十則 訓点資料の解読文作成

なお、わたしは、経典の仮名書き資料が国語史料として重要であると考え、さらにこれら以外に仮名書き本の公刊を企画いたしており、一連の古い仮名書き経典の叢書を完成したいと思っております。

(5頁)
 あらまほしき事なり。というか、実はそんなにたくさんあるわけではないのかな。