夏休みの自由研究(案)・葦毛の系統

日本で登録されるサラブレッドの毛色は、八種類と決められています。競馬新聞を見ればわかりますが、栗毛・栃栗毛鹿毛黒鹿毛青鹿毛青毛芦毛白毛のいずれかなんですね。それぞれの毛色の特徴については、コチラ(http://www.studbook.jp/ja/keiro.html)の説明に譲ります。「白馬の王子様」といった場合の、「白馬」というのは、つまり「葦毛(芦毛)馬」を指すということがお分かりいただけるのではないかと。
競馬用語を知らない人が葦毛馬を指して「青い馬」と言うことがあります。灰色が強い葦毛馬の場合、太陽光線があたると毛の色が薄いブルーに見えるので、「青い馬」ということになるのですが、私たちが言うところの「青毛」とは真っ黒な馬のことなので注意が必要です。青毛に日の光が当たると、非常に深い濃藍になって、ため息が出るほど綺麗ですね。
葦毛について小話でも。
毛色の遺伝の仕組みについては、まだ不明な部分が多いのですが、一つだけ確実なものとして知られている有名な法則があります。実は、葦毛馬というのは、両親のいずれかが葦毛でなければ生まれないのです *1 。隔世遺伝はありません。極論すれば、この地上から葦毛馬がいなくなったら、突然変異でもない限り、葦毛という毛色を持つサラブレッドは絶滅することになります。
つまり、葦毛馬の血統表を眺めれば、祖先の葦毛馬のラインを、途切れることなく、ずっと辿っていくことができるのです。
例えば、日本競馬史上に燦然と輝く葦毛馬、メジロマックイーン号。その母メジロオーロラは栗毛ですが、父メジロティターンが葦毛です。そして、その父メジロアサマが葦毛、そして、その母スヰートが葦毛、その父 First Fiddle 、その父 Royal Minstrel 、その父 Tetratema 、その父 The Tetrarch・・・。
ということで、これで今年の夏休みの自由研究の課題は決定ですね。では、葦毛のラインをどんどん過去に遡っていくと、最終的にどうなるのか?いろいろな葦毛馬を集めてきて、やってみてください。ちょっと面白い結果が出ると思いますよ。首都圏近郊にお住まいの方は、渋谷のhttp://www.equus.jrao.ne.jp/のライブラリを活用するのが良いでしょう。


余談ですが、葦毛馬は、ほかの毛色の馬に比べて競走能力が劣るという迷信が、近代に至るまで広く流布していました。もちろん、毛色と競走能力には何の因果関係もないのですが、その固定観念を打ち破った葦毛馬として、上に挙げた The Tetrarch と、「純白のダービー馬」と賞讃された Mahmoud *2 の名前は忘れてはいけないと思います。

*1:両親ともに葦毛であっても、葦毛以外の毛色の仔が生まれる可能性も十分あります

*2:そして、この Mahmoud の血は、後に、近代競馬に「革命」をもたらします