『現代語から古語を引く辞典』
- 作者: 金田一春彦,芹生公男
- 出版社/メーカー: 三省堂
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: 単行本
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「訂正すべきは訂正し」(「はじめに」)ということなので、もちろんこの改訂版を買うべきでしょう(付録も充実)。しかし、こういった改訂版が出たときの常道ですが、新旧双方を読み比べて考えてみることをお薦めします。いろいろと勉強にはなるので。
例えば、「かたち」項、旧版には、
かげ[陰・影・蔭] かた[形・象] さう[相] てい[体] なり[形・態] やう[様] やうす[様子] やうだい[容体・容態]
それが改訂版では、
かげ[陰・影・蔭] かた[形・象] さう[相] てい[体] なり[形・態] やう[様] やうす[様子] やうだい[様体] ようたい・ようだい[容体・容態]
「様」の歴史的仮名遣いは「やう」、「容」の歴史的仮名遣いは「よう」ということ。「ようだい」だけではなく「ようたい」と澄んで読む根拠は「容体(ヨウタイ)」(『節用集』易林本)。
ちなみに、「容体・容態」は「ようてい」ともよめるようです。『大鏡』、
御かたち・ようていは、ただ毘沙門のいき本みたてまつらんやうにおはします。
もう一例。「くるしめる」項、
せむ[責] たしなむ[困] なやます・なやむ[悩] ひづむ[歪] わづらはす[煩]
新版では、
せむ[責] たしなむ[困・窘] なやます・なやむ[悩] ひづむ[歪] わづらはす[煩]
増補された「窘」字は例えば、『古事記』崇神記(読み下しますが)、
爾くして、其の逃ぐる軍を追ひ迫めて、久須婆の度に到りし時に、皆迫め窘めらえて、屎出て、褌に懸りき。
と。
後世、「たしなめる」には注意を与える、叱る、といった転義が生じましたが、「窘」という漢字そのものにはそういった意味はありません。それでも、この表記は広く使われたようですね。『南総里見八犬伝』、
君を窘んとしたれども、御曹司を害し得ずして、那身は反て矢傷を受たり。