桐に鳳凰(2)

 そういえば、この「花札」シリーズで使用している札の図柄は「骸屋」さんという素材サイト(?)から頂戴したのですが、閉鎖してしまったのでしょうか・・・?


 鳳凰はどのような姿をしているのか。中国の伝説上の皇帝である黄帝もその姿を見たことがなかったので気になったようで、臣下の天老という者に問うたところ、

天老対曰、夫鳳象、鴻前而麟後、蛇頸而魚尾、龍文而亀身、燕頷而鶏喙。

(『韓詩外伝』)その姿は、前が鴻(おおとり)で後ろが麒麟、蛇の首に魚の尾を持ち、文様は龍で身体は亀、顎が燕でくちばしが鶏、というのが天老の返答でした。我々にとって親しみのある、一万円札の裏に描かれている平等院鳳凰像もだいたいそんな感じであることは一目瞭然です。
 もちろん、想像上の動物ですから、細部の設定(という言い方も変ですが)については諸説紛々としています。例えば、上述の黄帝はやがて実際に鳳凰に遭遇するのですが、『帝王世紀』という別資料の目撃証言によると、

鶏頭、燕喙、亀頸、龍形、麟翼、魚尾、其状如鶴、体備五色。

だそうです。燕のくちばしと亀の首といった辺りが天老の説明と少し異なっていますね。『説苑』にも黄帝と天老の問答に言及していますが、そこの天老の回答では、

鴻前麟後、蛇頸魚尾……龍文亀身、燕喙鶏噣、駢翼而中注。

「喙」も「噣」もくちばしという意味ですから、この辺りは本文上の問題があるかもしれません。「駢」は肋骨のことです。
 ほかにも、中国古代の辞書『広雅』には、「鶏頭、燕頷、蛇頸、鴻身、魚尾、骿翼、五色」(「骿」は「駢」と同義)、『京房易伝』には、「雁前麟後、鶏喙燕頷、蛇頸亀背、魚尾駢翼」(「雁」は独自の説のようです)、『楽叶図』には、「鶏頭、燕喙、蛇頸、龍形、麟翼、魚尾、五采」(麒麟に翼があるとは思えませんので、ここにも少し混乱がありそう)・・・等々、だいたいのイメージは一致しているのですが、細かい異同をつぶさに見ていくとなかなか興味深いものがあります。