銀漢迢迢夜気澄

偽作の可能性 - Cask Strength の追記です。

中原の虹 第二巻

中原の虹 第二巻

 今生のなごりにふさわしい曲といえば、かつて湖上の小舟の上で恋人たちが詠みかわした、陸游の詩のほかはなかった。
 心をこめて唄うその天河の詩人の歌を、万歳爺は身じろぎもせずに聞いて下さった。


 銀河迢迢として 夜気 澄む
 都て忘る 朝暮 蚊蝿に困しむを


 河漢 声無く 天 正しく青
 三三五五 満天の星

(354頁)
 肝心の原文によれば、「銀河」ではなくて、やはり「銀漢」でした。→ http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/t075/image/54/t075s3551.html 『中原の虹』は2年前の刷り(2006年12月4日第二刷)のものを見たので、今は訂正されているかもしれませんが。
 なお、「河漢声無く・・・」は「荊谿館夜坐」という別の詩の冒頭二句です。
 このような瑕疵が浅田氏の著作の価値を減ずるというわけではないにしても、やはり他人様の文学作品、しかも一字一句が命の韻文の引用ですから、より一層の注意が必要ですね。自戒をこめて。