「平安の仮名 鎌倉の仮名」展

先日紹介した「やまとうた一千年」展(「やまとうた一千年」展 - Cask Strength)はすでに閉幕してしまいましたが、こちらは出光美術館で18日(日)まで開催しているので、是非どうぞ。

石山切 伊勢集 断簡 伝藤原公任

わふるなみたの
きえるなるへし
人に物いひて猶つゝましかり
けるころ
あひみてもつゝむおもひのわひしきは
人まにのみそねはなかれける
よそなからおもひいてける人の
おとなかりけれは

「破り継ぎ」の料紙は鮮やかで、文字も流麗。圧倒的な存在感でした。
なかなか面白かったのは「自詠自筆の仮名」セクションの展示ですね。自作の歌を自分の手で書くということで、能筆の書家に頼んで清書してもらうわけにはいかなくなった歌人たちの苦労が偲ばれました。例えば、鎌倉時代「懐紙巻」は、四人の歌人(愛丸・頼清・玄覚・清隆)による同題の和歌を並べたものですが・・・書のことはよく分からないながらも、清隆のものからは一段と稚拙な印象を受けてしまうw
私としては、これは完全に同情することでして、というのも、慶弔礼式の際には自分の名前・住所を記帳しますよね。私は書道の心得がないので、筆記道具がサインペンではなく、筆ペンしか置かれてなかった日には、トンズラしたくなります・・・。清隆も「ああ、晴の場で、皆に見られるのは嫌だなぁ・・・」と思いながら書いたのかもしれません。こうして並べてみると、一般の官人・僧侶などがものした書と、例えば行成や寂蓮の書との間には歴然とした差、越えられない壁があることを痛感します(まあ、当たり前の話なのですが)。
あと、圧巻は、最後に展示されている、国宝・手鑑「見努世友」。鑑賞家の確かな目によって厳選された古筆を集めた手鑑は大好きで、見ていて全く飽きないのですが、これは特に迫力を感じます。必見。