老い

 六朝時代の大詩人、謝霊運に「彭城宮中直感歳暮」(彭城の宮中に宿直して、年の暮れに物を思う)と題する詩がありまして、そこに、

 修帯緩旧裳
 素鬢改朱顔

とあります。「素鬢」というのは白髪、「朱顔」は紅顔と同じで、要するに若い顔。――長い帯も着古した服にゆるやかに、白髪で若かった顔も老けてしまったよ、ということです。
 白髪と紅顔の対比というのはよくある表現なのですが、問題は作詩時の謝霊運の年齢。このとき、数えの34歳。
 まあ確かに、33、4歳で「朱顔」は難しいかもしれませんし、白髪くらいは生えているでしょうが、「素鬢改朱顔」は脂ののりきった三十代の人間の言うことでもなさそうですね。
 老成するのは結構だけど、それでも心だけは枯れちゃいかんなぁ、と思う今日この頃。