藤にホトトギス(3)

 鶯とメジロはお互い縄張り争いをしてもおかしくないと思うのですが、兄弟のような間柄であることは梅に鶯(4)でも言及しました。
 では、鶯のライバルは誰かというと、このホトトギスなのです。ホトトギスは鶯の巣に卵を産み付けて、鶯に子育てをやらせると伝えられています(『俊頼髄脳』)。こちらのほうが兄弟のような浅からぬ因縁を感じますが、鶯からしてみればいい迷惑でしょう。
 円融天皇がある日「鶯とホトトギスと、どちらが優れているか答えよ」とおっしゃったので、

折からにいづれともなき鳥の音もいかが定めむ時ならぬ身は

(『拾遺和歌集』雑下・藤原朝光)――それぞれの季節にはそれぞれの鳥(春は鶯、夏はホトトギス)がまさっていて、どちらが良いともいえない鳴き声の優劣をどのように判定できましょうか、この不遇な私が。
 歌自体は「鶯やホトトギスはそれぞれの季節で称賛されるのに、私は常に不遇だ」という恨み言が主眼にあるのですが、それはそうと、鶯とホトトギスの優劣を競うような趣向が比較的早い時期から現われることには興味をひかれます。
 朝光の歌では白黒つけていませんが、中世の『四十二のものあらそい』では、

うくひすのさへつる春のあしたより
 なをめつらしきほとときすかな

と、ホトトギスに軍配を上げます。