『石山寺縁起絵巻』の馬

 拝観したいですが、時間ないなー。

 重要文化財石山寺縁起絵巻」全7巻を初めて一挙公開する県立近代美術館(大津市)の企画展「石山寺縁起絵巻の全貌」(10月6日〜11月25日、京都新聞社など主催)をより楽しんでもらおうと、大津市石山寺で「石山寺の宝物」展がこのほど始まった。源氏物語を題材に描かれた同寺所蔵の多様な源氏絵と縁起絵巻の描写をテーマごとに見比べるコーナーなど、数多くの寺宝を公開している。

http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20120906000027

 大伴黒主のエピソード(巻一)源順が「左右」のよみ(「まで」)の啓示を受ける(巻二)菅原孝標女の参詣(巻三)紫式部の『源氏物語』の執筆(巻四)等々、よく知られた話が多い。特に、以下の『蜻蛉日記』の夢の記事は、原文よりもこの縁起の絵で知っているという方も多いでしょう。

 さては夜になりぬ。御堂にてよろづ申し、泣きあかして、あかつきがたにまどろみたるに、見ゆるやう、この寺の別当とおぼしき法師、銚子に水を入れてもて来て、右の方の膝に沃かくと見る。ふと驚かされて、「仏の見せ給ふにこそはあらめ」と思ふに、ましてものぞあはれに悲しくおぼゆる。

(天禄元年)

石山寺縁起 - 国立国会図書館デジタルコレクション より*1。巻二・15コマ。画像はクリックで拡大)
 あと、なんといっても(もし馬が好きならば)注目したいのは巻五です。巻五には計十五頭も馬が登場するのですが、

 絵師はこれらを描くためにさまざまな馬を家の中で描いたことであろう・・・あるいは『石山寺縁起』の馬は当時、評判を取ったのかもしれない・・・絵師にも得手、不得手がある。この絵師は家の生活や馬を描くのに長じていたのである。

五味文彦『中世のことばと絵』中公新書、1990年。139、142頁)
 本物の筆致を目の前で見てみたい・・・!

(巻五・14コマ)右から二頭目の馬を見ると、尾を中ほどで括っているのがわかりますか?日本在来種は体高に比べて毛が非常に長かったと言われています。なお、一番右の馬には「アヲ」(青毛)二頭目には「カケ」(鹿毛)と毛色の指定がされている。実際の彩色はどうでしょうか。

(巻五・20コマ)有名な絵ですね。藤原国能邸の厩舎の様子が描かれている。馬(この子は連銭葦毛ですね)の体を支えるために胴体を綱で吊るという古代のならわし。

*1:『日本絵巻大成』の写真でお見せしたかったのですが、なぜか書架に見つからないので、この模本で・・・