「桑字帝王」――「桑」ではなくて「乗」で「四十八」と解く説話(3)

 唐・玄宗が見つけた霊符に記されていたとされる文字は「乗」ではなくて「桑」でほぼ確定のようです。

(『続群書類従』第34輯 続群書類従34 拾遺部 - Google ブックス)『北斗集』は室町中期の五山僧七名の七言絶句を集めたアンソロジーで、問題となる詩は月翁周鏡のもの。この起句冒頭「桑字帝王」というのが玄宗を指すということになるらしい。

桑字帝王仙李家 紅鈴曾綴護紅霞
 玄宗雖五十年太平天子、四十八死矣。或時有一枚鏡、裏有桑字。占者曰、桑字四十八也。玄宗四十八而薨。遂然矣。(以下略)

(『覆簣集』*1、堀川貴司氏『五山文学研究 資料と論考』所収、267頁)

 何やらおかしな注で、四十八を玄宗崩御時の年齢としているようですし、「鏡」に桑の字があったとするなど、『開天伝信記』等を直接受容したのではなく、何か別の資料を介在している(未確認ながらも、ひょっとしたら、というものはあります)ようにも思えますが、さあどうでしょう。

*1:「序文によると、学ぶべき詩が多く途方に暮れている小童に対して、一昨年の天文九年(一五四〇)、秉払のため上京したときに見た詩五〇首を書き与えたが、更にこれに注を付けてくれと言われ、注を付したのが本書だという」前掲書264頁。