築島裕「仁和寺御経蔵『大毘盧遮那成仏神変加持経』『大毘盧遮那成仏経疏』について」について

 汲古書院さんからDMが届き、『築島裕著作集』の案内が同封されていました。いよいよ刊行開始ですね。楽しみです。
 この案内、著作集に収録されている論考のタイトルを全て列挙してくれているので、大変便利です。汲古書院のサイトにアップされていないのはなぜでしょうか。

 一点、目にとまったものが。第二巻収録予定の「仁和寺御経蔵「大毘盧遮那成仏神変加持経」「大毘盧遮那成仏経疏」について」なのですが・・・

 なぜ目にとまったかというと、初出の時とタイトルが異なるのでは?と思ったからです。案の定、『真言宗寺院所蔵の典籍文書の総合的調査研究――仁和寺御経蔵を対象として――』(月本雅幸氏研究者代表、平成9〜12年度科学研究費補助金基盤研究(A)(1)研究成果報告書、2001年)では、「仁和寺御経蔵「大毘盧遮那成仏神変加持経」「大毘盧遮那経疏」について」となっていて、『大毘盧遮那成仏経疏』の「成仏」二字が初出論文にはない。

 『大毘盧遮那成仏経疏』は、『大日経疏』とか『大疏』という書名で一般的には親しまれていますが、『大毘盧遮那経疏』という書名が全くあり得ないわけではなくて、よく見かけます。
 もちろん、実見したことはないので、仁和寺蔵本の内題がどうなっているのか詳しいことはわかりませんが、吉沢義則『点本書目』ではやはり「大毘盧遮那経疏」(29頁)、しかし中田祝夫『改訂版 古点本の国語学的研究 総論篇』では「大日経疏」(403頁)と紹介され、『訓点語辞典』では「大毘盧遮那成仏経疏」(175頁)となっていて、学界内でも統一されていないようです。
 統一されていないのは仕方ないのですけれど、築島裕平安時代訓点本論考 研究篇』では本書を「大毘盧遮那成仏経疏」としているので(787頁)、混乱に拍車をかけているようです。
 ともかく、前述『平安時代訓点本論考』を除くと、築島氏は仁和寺蔵の大日経疏を一貫して『大毘盧遮那経疏』と呼んでいるようなので(『訓点語彙集成』文献番号10930009)、このたび論文名を(おそらく編集部の判断で)改めたのは、どういうことでしょうか。
 で、ここから学べる瑣末な教訓は何かといいますと、「大日経疏」を検索したい時は、いろいろと試したほうがいいよ、ということ(小並感)。