「たゞ人は日記付けをする程にだにも書きつければ事欠けず」

バイトで単位取得 中部院大とイオンが連携協定

 アルバイトが授業の単位に―。関市と各務原市にキャンパスを持つ中部学院大・同大短期大学部は15日、流通大手のイオンと人材育成で連携協定を締結した。同大初となる本格的な有給インターンシップを行い、学生はイオンモール各務原各務原市那加萱場町)で実務体験しながら社会適応能力を学ぶ。
 有給インターンシップはアルバイトの“進化形”で、学生は授業の空き時間を利用して働きながら提案力を身に付け、自ら動くことを学ぶ。学生の実践的能力を伸ばしたい大学側と、人材確保や地域との連携を図りたいイオンの狙いが一致した。

http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20150416/201504160908_24733.shtml

 「銭・米こそ、ひとつの能」(新日本古典文学大系『室町物語集 下』340頁)というのは確かにそうだとは思うのですが、大学当局があからさまにそれを称揚するのはどうなのでしょう。

室町物語集 下 (新 日本古典文学大系)

室町物語集 下 (新 日本古典文学大系)

 今のセリフは、『乳母の草紙』に登場する(二人の姫君のうち、姉の)乳母、竜王の言葉です。
 この乳母はとにかく(いわゆる)「実学」志向。

されば、たゞ人は日記付けをする程にだにも書きつければ事欠けず。姫君もよく御聞き候へ。歌詠み、物を書きたるばかりにてはひだるさも止まず、また銭・米にもならぬ物にて候。人はさのみ大様にては叶わぬものなれば、日記・算用をも習わせ給へ

(341〜342頁)と言い切る人物で、貴族的教養を相手にしていません(よって、貴族の子女を育てるのにふさわしくないということで、後に追い出されます)。なお、「日記付け」とは「日々の事務的なまたは商用の事柄の記録」(341頁。脚注44)のことです。まあ、Excelを習え、提案書の書き方を学べ、という感じでしょうか。
 実は、この竜王という人物、庶民的感覚からすると、痛快で、滑稽で、なかなか魅力を感じさせるのです。
 ・・・しかし、大学に入った君たちが「たゞ人は日記付けをする程にだにも書きつければ事欠けず」でいいのでしょうか。