梅に鶯(3)

 それにしても、「あかよろし」の「あか」の語義については諸説ありますが、「よろし」の方は「宜し」だということで疑問は持たれてないようです。しかし、「赤宜しい」では、やはり意味不明だといわざるをえません。
 博打の道具ですから、隠語の匂いもかすかにしませんか?
 現在では赤短三枚揃いの役を「赤短」、青短三枚揃いの役を「青短」と呼ぶのが普通ですが、かつては赤短や青短の役を「よろしい」と呼んでいたとされます。

「さうですね、恰度一杯々々ぐらゐにやア引けたでせうよ」
「嘘いへ!十円やそこら儲けてやがるくせに!」
「それぢやアあなた、もともともおんなじぢやアありませんか。何しろ昨夜は、女将さんの一人勝でさア」
「八倍場と四倍場で、四光とよろしいを、二度続けさまに食はされたにやア驚いた」

(『今年竹』「出来心」)赤い短冊は松・梅・桜以外に藤・菖蒲・萩・柳にもありますが、役として成立するのは松・梅・桜の赤短三枚の揃いです。そこで、「よろしい」が成立する赤短三枚を明示するために短冊に「あかよろし」を書き入れたという可能性は考えられませんか。つまり、「赤(短の)よろしい」と。青短は三枚しかないので、わざわざ「あをよろし」を標示する必要がなかったのです。
 もちろん、この仮説は「よろしい」の名称が「あかよろし」に先立って成立していることが前提となります。