桜に幕(1)

 桜の20点札、桜に花見幕。綱を張って幕をかけるわけですが、幕の代わりに小袖をかけることもあって、小袖幕とも言われます。

東叡山 黒門より二王門までの並木の桜の下には、花見衆なし。東照宮の御宮の脇、後松山の内、清水の後に、幕走らかして見る人多し。幕の多き時は三百余、少なき時は二百あまりあり。

(『紫の一本』巻四・花)東叡山は徳川家の菩提寺である寛永寺のこと。近世の上野の花見で張り巡らせた美しい幔幕は、場所取りと鑑賞のためのものですが、現代の花見と比較してその風雅と野暮の落差は目を覆いたくなりますね。
 幕を張るのは結構大変なので、今年の花見はせめてブルーシートの代わりに「花莚、毛氈しかせて」(『好色五人女』巻一「太鞁による獅子舞」)ぐらいはいかが。