藤にホトトギス(4)

 10点札の左下、そしてこのカス札にも描かれている通り、藤は蔓を持っています(まあ、言うまでもないことですが・・・)。
 この蔓は強靭で、縄の代用品になったりするのですが、ちょっとした呪力を駆使すれば異常な威力を発揮するのでご注意を。
 葛城山に住んでいた役行者は、ある日、葛城山と金峯山の間に石橋をわたすことを思い立って、鬼神たちをこき使って橋造りを始めました。鬼神は姿が醜いのを恥ずかしく思い、夜の間だけ仕事をしていたのですが、役行者はそれを許さず、葛城山の主宰神でもある一言主神に対して、「昼に隠れているとはどういうことだ、いい加減に作るな」と責め立て、縛り上げて谷底に落としてしまいます。
 ――よくよく考えてみるとひどい話なのですが、一言主神はこの後どうなってしまったのでしょうか。

葛木山ノ谷ノ底ニハ、常ニ物ノ呻コヘキコユルヲ、人尋イタリテ見レバ、大ナル岩ヲ大ナル藤モトヒ縛レルヲウタガヒテ、ソノ藤ヲキレドモ即又如元ニ成ワタリヌ。

(『三宝絵』中巻)葛城山の谷底からはいつもうめき声が聞こえ、そこを尋ねてみると、巨岩に藤の蔓がまとわりついており、その藤を切ってみても元通りになってしまう・・・。
 古代の怪奇スポット、葛城山