菊に盃(4)

菊花 には、 大りん と 小りん と あり、 又 白黄 かば 紅 桃 等 の 色 ありて、 其 しゆるゐ 甚だ 多し。 此等の しゆるゐ は、 おほかた やしなひ に よりて、 変じたる もの にして、 新 なる しゆるゐ は、 多く 実生 より 作り出す なり。

(『尋常小学読本』(1886年)、巻之四「第十六課 菊」)
 江戸時代になると朝顔と同様に菊の品種改良が盛んになり、『花壇地錦抄』には200を超える品種がリストアップされています。ちなみに、花札に描かれる菊は、おそらく花弁の表裏で色が異なるもので、その様子は「美濃菊」の一種によく似ていますね。(参照、http://3922160.at.webry.info/200611/article_1.html
 菊といえば白か、黄か、などといった素朴な代表争いは近世で終わりを告げたのです。そもそも、紅色や紫色などの花弁の品種も増加し、白菊・黄菊の地位はともに相対的に低下してしまいました。
 人工美が極致に達したとき、それに対する反動が出るのも、当然の流れといえます。

黄菊白菊 其外の名は なくも哉

(嵐雪)――菊というのは黄菊・白菊だけがあればいいのであって、ほかのものはなければいいのに。