菊慈童

 どんなに完璧を期しても、誤字・脱字がなくなることはありません。ですから、単純な誤字・脱字の類を他人が公に指摘するのは、あまりいい趣味とはいえないでしょう。しかし、筆者や編集者の誤解によって誤った情報が提示されている場合は、読者に無用の混乱を引き起こす可能性があるので、訂正しておくに越したことはありません。

NHK 美の壺 藍染め (NHK美の壺)

NHK 美の壺 藍染め (NHK美の壺)

 藍染に用いられる文様を説明する箇所で、「菊茲竜」(65頁)なるものが出てきます。これはどう考えても謡曲の題材とかにもなっている「菊慈童」だろうと思ったのですが、ご丁寧に本書には「きくじりょう」とルビがふってあります。そうなると、私の知らない文様で「菊茲竜」というものがあるのかと考え直し、少し調べてみたのですが、埒が明かない。やはり、「菊慈童」の誤りのはずですが、これは一体どういうことでしょうか。
 「慈」が変換ミスで同音の「茲」になることはあるかもしれませんが、「竜」と「童」は字形が少し似ているだけで・・・。原稿の段階か、編集の段階かはわかりませんが、こういう「単なる誤字」ではないものは大変厄介ではないかと感じます。