中国人の名前の省略法(本編)

 まあ「法」といっても何か法則を示すわけではないので、期待していた方々にはごめんなさい・・・割と常識的な話です。
 漢詩文では対句を構成する必要のため、そして、声調の関係で姓名の一部を省略して表わすことがよくあります。名だけ、字だけを示すほうが実は割と調べやすいので、初学の方々はこの一部を省略するというありように早く慣れておいたほうがいいと思います。

  • 姓の一部を省略

長年願奉西王讌 近侍慚無東朔才

(『唐詩紀事』巻11、趙彦伯)、「東朔」は「東方朔」。(ちなみに、「西王」も「西王母」のこと)

思乃請序皇謐、謐見之嗟嘆、遂為作序。

(『天中記』巻37)、「皇謐」は「皇甫謐」。(ただし、これは脱字の可能性も)

  • 名(字)の一部を省略

権曰、仲尼・厳平、会聚衆書、以成春秋・指帰之文。

(『三国志』蜀書、秦宓伝)、「厳平」は「厳君平」。

可愛剡渓僧 独尋陶景舍

(戴叔倫「新年第二夜答処上人宿玉芝観見寄」)、「陶景」は「陶弘景」。
 というわけで、昨日のクイズの答えは「司馬相如」でした。「司馬」を省略した「馬」と「長卿」(長卿は司馬相如の字)を省略した「卿」を組み合わせたものですね。
 ただ、一番厄介なのが二人の人物を併称するときでして、それぞれの名前を一字に省略して組み合わせることがしばしばありますが、これは直感頼りの面があります。

雖淵雲之墨妙、厳楽之筆精・・・

ここに四人の名前が挙がっていますが、誰のことか見当つくでしょうか。「淵」は「王褒」の字「子淵」の「淵」。「雲」は「揚雄」の字「子雲」の「雲」。「厳」は「厳安」の姓。「楽」は「徐楽」の名。注がないとコレは厳しい。
 こういった例をいろいろと探し出して調べていることがあるので、いずれ報告するかもしれません。