文正草子

 昨夜、忘年会の帰りに、年の瀬の挨拶をするだけのつもりで行きつけのバーに立ち寄ったら、満席で何やらただならぬ雰囲気。そして、衝撃の事実が。長いこと店を一人で切り盛りしていたかおりさん(仮名)が結婚、年内退職と・・!
 十年来のつきあいで、知りあった時はまだお互い二十代だった(はず)。無常の時の流れを感じます。「季節ごとに一回来る、非常連のような常連」ということで店への貢献は非常に微々たるものでしたが、顔を出すといつも歓待してくれましたね。
 移転する前の旧店舗では、トリビアをお互い披露したりもしたなあと思い出しました。本(共著)を出したときに一冊献本したら、およそ場違いなのに棚に置いてもらって、来る客来る客みんなに推薦してくれていたのも良い思い出になります。
 それにしても、昨日思いつきでふらっと寄らなかったら、もう会えない可能性もあったわけですね。不思議だ。そういえば去年もなじみの居酒屋の店長や店員の退職直前に挨拶することもできたし、こういうのは寂しいですけど、結びつきは大切にしたい。

・・・中将殿も、理とおぼしめし、衛府の蔵人語りしより、始め今までかきくどき語り給ふに、姫君もうちとけ給ひ、いつしか浅からず契り給ふ。さるほどに、秋の長き夜なれども、逢ふ人からのしののめ、早く白みければ、
  恋ひ恋ひてあひ見し夜半の短きは睦言尽きぬ新枕かな
と、かやうにのたまへば、姫君うちそばみつつ、
  数ならぬ身には短き夜半ならしさてしも知らぬしののめの空
それより、天にあらば比翼の鳥、地にあらば連理の枝とぞ契り給ひけり。
・・・まづまづ、めでたきことの始めには、この草子を御覧じあるべく候ふ。

(『文正草子』)
  どうかお幸せに!