先月に続いて入矢義高氏の名著が増補されて岩波現代文庫に。昨日早速買ったよ。
- 作者: 入矢義高
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/02/17
- メディア: 文庫
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増補されたエッセー・論文はほかに「薬山の没蹤跡」「ことばと禅」「自知ということ」「型からの脱出」「好事は無きに如かず」「目前の生死」(岩波のサイトには「禅と生命科学」が収録されていることになっていますが誤り)。
「薬山の没蹤跡」は紀行文。耐えがたい熱暑の蒸気が文面から立ち上がってくるようです。「ことばと禅」は「禅と文学」(『求道と悦楽』)と共通する主題で、「自内証」は言語化されなくてはならず、「不立文字」は逃げに過ぎないと喝破します――その一方で、「説似一物即不中」も名言だと私は思うのですが――。「目前の生死」は「明白を嫌って」と同様に、人間が避けることのできない死に対して禅僧がどのように決着を図ったのかを問題にする。
「自知ということ」は、愚鈍な人間である私にとって、少し苦しい読書でした。雪峰と玄沙の二人が稜道者(長慶慧稜)に暗示(でも当人たちはそれを直接的な提示だと思っているのでしょうけど)を与え続ける、その問答の記録。私は、どうしても、稜道者に同情してしまいます。
余談ですが、309頁後ろから2行目に誤字あり。「日」→「曰」。あと一箇所、昨日電車内で読んでいて不審に思った引用文があった(気がした)のですが、メモしなかったばかりに、どこだかわからなくなった。
あと、これも余談めいているものなのですが、本書所収「寂室」の付記で、寂室の詩偈が当時において最高であると誉めた上で、中巌円月に対しては「詩の格調はさほど高くはなく、ソツもない代わりにコクも乏しい。いわば模範生が作った模範的な詩である」と評価を落とします(143頁)。しかし、新日本古典文学大系『五山文学集』では「豊かな個性色を帯びる」(235頁)と。この(全面的ではないにせよ)評価の転換を導いた中巌の作品はどれか、気になる。
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