西洋絵画を鑑賞する時の視線の動き

 素人の気楽さから 絵画中の時間の流れ - Cask Strength の続きを書こうと思うのですけど、わたしたち(東洋人)は縦書きの右→左という書字方向の圧倒的な規制下にあるので、絵巻物や漫画に限らず、絵画一般を右から左に視線を移動させて鑑賞していますよね。鑑賞者だけでなく、制作者の側でもそのことが意識的・無意識的に作品の構図に影響を与えているに違いない。
 ということは、西洋絵画を鑑賞する時はその逆があてはまるわけだ。当然といえば当然だけど。なので、よく言われている話ですけど、東洋美術の展覧会では順路が逆時計周り、西洋美術では時計回りになっていることが多い。
 その流れでいえば、西洋美術の解説書は以下の名著のように横書きが望ましいということにもなる。
 

まなざしのレッスン〈1〉西洋伝統絵画 (Liberal arts)

まなざしのレッスン〈1〉西洋伝統絵画 (Liberal arts)

 しかし、時計回りに巡回しようが、本が横書きになっていようが、一枚の絵に相対するとやはり視線は右から左に動いてしまうという人は意外と多いのでは。
 ひょっとしたらそういう研究はすでに数多くあるのかもしれませんけど(御教示お願いします。それこそ三浦先生が何か仰っているかもしれない・・・)、もしそういうことであれば、わたしたちと西洋人は同じ絵に対して(無意識に)だいぶ異なった印象を持つことになるわけですよね。何でもいいのですけど、たとえば「受胎告知」。

File:Leonardo Da Vinci - Annunciazione.jpeg - Wikipedia
 大天使がまず目に入る西洋人と、マリアがまず目に入る東洋人と。
 これをモチーフにした絵画は幾らでもありますけど、ガブリエルは左に配置されていることが多い(もちろん、それは伝統的な構図としてすでにお決まりの約束事になっているのでしょうけど)。
 以下の構図に対して、西洋人はどう感じるのでしょうか。

File:L' Annonciation de 1644, Philippe de Champaigne..jpg - Wikipedia
 違いはない、という可能性もあるかもしれませんが。