ルビによって引き起こされた本文の誤り

 小川環樹唐詩概説』は、まさに愛読書と呼べる本でして、中国詩人選集版(1958年)・著作集版(1997年)・岩波文庫版(2005年)はそれぞれ複数回通読し、今もまた岩波文庫版を読んでいるところです。
 過去の版の誤りを補正したこの岩波文庫本は決定版と呼べるものなのですが、それでも新しい本を作る以上、新しいミスを免れることはできません。
 このたび見出したものは、単純な誤字なのですが、ルビにひかれて本文の漢字を誤ったのであろう典型的な例ですね。2012年の第5刷でも訂正されていなかったので、私を含めて多くの読者が見逃してきたということになります。
 第三章「盛唐」で、孟浩然「故人の荘を過る」(過故人荘)が紹介されていますが、その第六句、

(中国詩人選集、46頁)

(著作集、36頁)
この「話(かた)る」が、

岩波文庫、69頁)
 ついこうなってしまうのも分かる気がします。次回の増刷時に訂正してくだされば。
 なお、ついでのことですが、この「過故人荘」は『唐詩三百首』に収録されていることで我々日本人にもなじみがありまして、『唐詩三百首』は目加田誠訳注の平凡社東洋文庫本全3冊で読んでいる人が多いでしょう。
 本書の古い刷りの本を持っている方はお気をつけください。架蔵本は第1刷(1975年)と第16刷(1996年)ですが、二つとも挙げてみますと、

(第1刷、93頁)

(第16刷、同)
 第5刷からこのような変更が加えられています(参照、『続校注唐詩解釈辞典〔付〕歴代詩』495頁)。
 (これはネタがネタなので某所での実習課題に使えるかも・・コソーリ)