宋之問「苑中遇雪応制」詩
書は書家としても知られる尚育が唐の詩人・宗之問の漢詩を書いたもので、尚育の書には珍しく行書を崩した書体だという。美ら島財団で修復が始まっており、来年度にも公開される。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-231494-storytopic-1.html
「宗之問」はもちろん「宋之問」のことですが、それはさておき、この「苑中遇雪応制」詩の書は国宝級の発見として先日も報道されました。慶賀。尚育王の「書」発見 1838年、国宝級 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
実はこの記事に第1句・第2句の解釈が示されているのですが・・・
漢詩は「紫禁仙輿詰旦來 青旗遙倚望春臺」(皇帝のみこし=紫禁の仙輿=は早朝に来る。青い旗がはるかかなたより近づくのが春台=高台=から望める)などとつづっている。
「望春台」を「春台より望む」と解しているようですが、果たしてどうでしょうか。「望春宮」のなかの台、という可能性のほうが高いのではないか。少なくとも、陶敏・易淑瓊校注『沈佺期宋之問集校注(下)』(中華書局、2001年)はそのように解釈しています(476頁)。おそらく同時に作成された劉憲「苑中遇雪応制」詩に「龍驂暁入望春宮」とあるのが傍証となりますし、この「望春台」は杜牧「長安晴望」詩にも見えます。最新の呉在慶撰『杜牧集繫年校注 第四冊』(中華書局、2008年)でも「疑在望春宮中」と、こちらはやや慎重ですが、同じ理解です(1265頁)。
なお、「倚」は「立也」(『広雅』釈詁)の訓でしょう。
なので、この句は「青旗 遙かに倚つ 望春台」と読むことになると思います。