食中毒

広瀬旭荘の随筆、『九桂草堂随筆』に、ゆで卵・焼卵を食ってエライ目に会ったという話が、コミカルに描かれています。

鶏卵のゆで或は焼きたるもの、既に冷なれば毒あり。余二十二三のとき、豊前より郷に帰りしに、藤山と云ふ処に至りて大に飢ゆ。我家より小田寛吾と云ふもの迎ひに出て、此処飯なし、唯ゆで卵ありとて、これを供す。既に冷なり。飢に乗じて、十五六枚を食したり。家に帰りて後、暴瀉数十行。十九年前、江戸に遊びしとき、長府の侍医福原伯亮、重組を贈れり。中に焼卵あり。翌日その残りを食す。俄に下痢六七十行に及ぶ。それより始めて毒あるを知る。