柳に小野道風(4)

 柳のカス札。太鼓に鬼(雷神)の手。
 柳は基本的には春の景物だと言いましたが(「柳に小野道風(2)」)、四季を通じて目を楽しませてくれますね。上島鬼貫はその折々の美しさを、

柳は、花よりもなを風情に花あり。水にひかれ風にしたがひてしかも音なく、夏は笠なふして休らふ人を覆ひ、秋は一葉の水にうかみて風にあゆみ、冬はしぐれにおもしろく、雪にながめ深し。

(『独言』下巻)と描写しました。「冬はしぐれにおもしろく」のことば通り、柳の20点札とこのカス札には雨が降っていて、柳の札が俗に「アメ」と呼ばれるゆえんです。
 カス札は異様な図柄ですが、太鼓と雷、と来ればおなじみの雷神さま。「鬼の手」とされるものは、一見、龍の指のようにも見えます。龍もまた雨に関係の深い生き物です。
 雷神が鼓とともに描かれる歴史は古く、約2000年前にはすでにそのような絵が存在していました。

図画之工、図雷之状、累累如連鼓之形、又図一人若力士之容、謂之雷公、使之左手引連鼓、右手推椎、若撃之状。

(『論衡』、雷虚篇)――絵師が雷を描くさまといえば、太鼓をいくつも連ね、また、力士のようなものを描いて、これを「雷公」と呼び、左手で太鼓を引き寄せ、右手でバチを推して太鼓をうっているようにさせる。