隋書経籍志詳攷から漢書芸文志詳攷、あるいは(新・旧)唐書(経籍志・芸文志)詳攷へ

 昨日、古勝先生(xuetui)が『漢書』芸文志の重要性を説かれたことを承けて。
 『漢書』藝文志PDF | 学退筆談
 日本古代もしくは中国古代〜中世について勉強している人であれば、漢籍に関しては(仏典は別問題。それはまた後日)、興膳宏・川合康三『隋書経籍志詳攷』および矢島玄亮『日本国見在書目録――集証と研究――』(狩谷棭斎『日本現在書目証注稿』、小長谷恵吉『日本国見在書目録解説稿 附 同書目録・同書索引』といった、先行する業績もありますが、やはり完成度が高いのは『集証と研究』)は絶対に必要な本でして、これは手元に置いておくか、近所の図書館に入れてもらうべきもの。

隋書経籍志詳攷

隋書経籍志詳攷

日本国見在書目録―集証と研究 (1984年)

日本国見在書目録―集証と研究 (1984年)

 これを疎かにすると、大事なところで足をすくわれかねません(cf. 『太田晶二郎著作集 第一冊』・内藤湖南「唐代の文化と天平の文化」・神田喜一郎奈良時代に伝来した漢籍に就いて」等)。古代後期以降になると『通憲入道蔵書目録』や藤原頼長台記』等も確認することになりますが、それはさておき。
 『隋書』経籍志の訳注が出て、すでに十五年。目録学を発展させるべく、そろそろ次のステップに進むことが望まれるところです。ただし、どちらの方向をとるかが問題になります。遡って目録学の原点ともいえる『漢書』芸文志に行くべきか、それとも『旧唐書』経籍志あるいは『新唐書』芸文志の考証を目指すか。余談ですが、両唐書の図書目録の利用に際しては『唐書経籍芸文合志』(台湾・世界書局)が上下二段で相互参照できるようになっていて、最も便利です。
 日本古典文学・日本史の研究者であれば『唐書』(新旧)の図書目録の注を求めるに決まっています。しかし、そこがなかなか厄介なところで、漢学の側からすれば、『唐書』の目録がやや杜撰であるというのは常識になっているのです(cf. 内藤湖南支那目録学」・倉石武四郎『目録学』等)。どうしたものか。
 どちらの方向に進むにせよ、日本の Sinologists の本領発揮を期待しています。上から目線で言うな、と叱られそうですけど。