写本で分注の文字数カウントを誤った時の処置

 分注(割注)スタイルの文章の場合、ワープロソフトなら自動的に処理してくれるので問題ないのですが、手づから書いている場合は分注内の文字数をあらかじめ把握しておかないと、下が揃わなくなりますよね。奇数の場合は、一字分を埋めるために「也」とかを最後に加えてキレイに揃えたりすることがままありますけど。
 以前ある人から、あのスタイルは字数計算が面倒くさいし、誤って結構な余白ができて、しまった!・・・というケース結構あったのではないですか、と言われたことがあって、実際にそういうもの現存しますよ、それらしい字を入れ込んで見た目を繕うこともありますよ、と答えたのですが、その場では良い実例を紹介できず。
 さきほどたまたま思い出しました。たとえば、こういうものです。曹子建(曹植)「贈丁儀一首 五言」(『文選集注』巻47)。

(『唐鈔文選集注彙存 一』233頁)
 分注の最後に「従微起也従微起也」と同じ文言が繰り返し出てきますが、これは下を揃えるためにわざと衍字にしたものであることは間違いなく、この複製本だとわかりづらいのですが、最後の四字の右脇に小さく「゛」が付されていて、見せ消ちにしています。