前田金五郎氏「続『江戸時代語辞典』読後感・寸評」

前田 金五郎氏(まえだ・きんごろう=専修大名誉教授・近世文学)21日午後5時38分、消化管出血のため、東京都大田区の病院で死去、92歳。

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岩波 古語辞典 補訂版

岩波 古語辞典 補訂版

 動詞は連用形を見出し語とし、語源説明にも特色のあった『岩波古語辞典』。持ち運びができるもののなかでは今でも最高の古語辞典の一つでしょう。これもよく知られていることですが、江戸時代前期語に強いという特徴もあって、それは故前田氏の御尽力によるものです。
 その前田氏に、『江戸時代語辞典』(角川学芸出版)の書評がありまして、昨年刊行された『思い出雑記帳』(勉誠出版)に収録されています。
CiNii 論文 -  潁原退蔵著・尾形仂編『江戸時代語辞典』読後感・寸評
思い出雑記帳

思い出雑記帳

 本論は『江戸時代語辞典』の疎漏について延々と(←誇張ではなく)述べるもので、今まであまり目にしたことのない、異様な雰囲気の文章でして、とにかくこれは御一読願うしかないのですが、『思い出雑記帳』には新稿として「続『江戸時代語辞典』読後感・寸評」と題する続編もあります。

本事典の読後感・寸評前稿では、スペース増大の懸念から、「あ」の部のみ詳しく寸評し、「い」の部以下は極少の語彙のみ寸評したが、折角三ケ月余調査したので、「あ」の部同様詳しく寸評を加えた方が、読者諸氏にも有益だろうと、今ここに執筆する気になり、以下寸評を記述すること左の如くである。

(145頁)ということで、以下227頁まで、『江戸時代語辞典』「い」以降の項目について検証を加えます。御自身が関わった『岩波古語辞典』の記述と比較し、この語は『岩波古語辞典』に採録されているのに『江戸時代語辞典』にはない(「不載」)、この語義説明は『岩波古語辞典』の記述の方が正確である云々というのがその主たる方法です。

(185頁)どこでもいいのですが、どの箇所もこのような調子。「ふ」以降になると、記述に対する批判がほとんどなくなり、『江戸時代語辞典』に不載の語を列挙することが中心となって、さらに幻惑的になります。いろいろと感じるところがあります。

筆者のように九十歳の坂を越えた者は、最早御手伝いは出来ないが、若い後学はこぞって、『江戸』の大増補改正の事業に参考するのが、近世文学者の義務であろうと、深く信じて筆を措く。

(227頁)