『山家集』の読み仮名
本来であれば今日は順番としては「本棚メモ」の日なのですが、やはり時期が悪くて新刊書がほとんどありませんで、かわりに年末年始にぽつぽつと読んでいた本から瑣末な小ネタを。
- 作者: 西行,久保田淳,吉野朋美
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2013/12/18
- メディア: 文庫
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底本にまれに存する読み仮名には〈 〉を付した。
(凡例3頁)
たしかに歌集にはあまり見ないですよね、漢字の振り仮名。ひょっとしたら珍しい訓があるのかもしれない!と思い、読みながら注意していたのですが・・・嘘偽りなく「まれ」にしかない。私も散漫なので見落としを懼れますが、二例しかないようです。
(232頁)
(248頁)いずれも『山家集』所収歌(底本は陽明文庫蔵近世初期写本「六歌集」)。
当然の疑問は、なぜこれらにこの傍書が?ですよね・・・わかりません。
「住」〈スム〉は、動詞の活用の誤りを防ぐためのものでしょうか。
「法」〈ノリ〉については、「みのり」(御法)とよまないように、という意図でしょうか。この歌、第一句が「さとりひろき」の六音になっていて、西行がよくやっていた破格の字余りの一例です。そういったこともあって、第二句以降の句切れの位置を明確にしようとしたのでしょうか。
不詳としか言いようがありませんが。
さて、陽明文庫本「六歌集」を底本としたものとして、ほかに日本古典文学大系『山家集 金槐和歌集』があって、古典大系本も本書と同様の処置、つまり、底本の傍書を〈 〉内に入れて明示する方針を採っています。そこで、念のために古典大系本(架蔵本は1965年1月第5刷)にも目を通していたのですが、
(124頁)
お、これは岩波文庫本に誤脱ありかな?と思ったのですが、頭注には、
底本は「我涙哉」の「涙」を見せ消ちにして、その右傍にタモトと書く。
なるほど。見せ消ちについてどこまで言及すべきは、スペースの問題もあって難しいところだと思います。