法苑珠林校注

  周叔迦・蘇晋仁校注『法苑珠林校注』(中華書局 2003年)

全6冊。ごく簡単に文字の異同と校合の結果を示す。語句の注釈がいっさいないのは残念ですが、そんなことをやっていたら分量はこの何倍も必要になるでしょう・・・。
一番良かったのは、引用文の出典を明らかにしている点。これだけでも買った甲斐がありました。『法苑珠林』というのは、仏教関連の概念・語彙の解説や、仏教の故事を集めた百科事典(類書)の一種で、これと『諸経要集』があれば、結構便利。
さまざまなお経や漢籍からの記事の切り貼りで構成されているのですが、『法苑珠林』の場合は、それぞれの篇ごとに「感応録」という項目を立て、そこに「世にも奇妙な物語」的な説話を集めていて、それがすごく面白いのですが、それはともかく・・・。
仏教故事を手っ取り早く調べるには便利ですが、問題が一点あり。引用文は、「依『新婆沙論』云・・・」とか、「『対法論』云・・・」とか、書名はちゃんと明らかにしているものの、どこの「巻」(篇)に入っているかは明示されていない。孫引きはできないから、もとに戻る必要があるのですが、短いお経ならともかく。『大般若経』(六○○巻)や『大智度論』(一○○巻)などが引用されていた日には(涙)
そこで、校注の部分で、ちゃんと第何巻にあるのかを明らかにしていくれている(上述)のはありがたい。しかも、通覧していくと、「此段出処待考」、つまり出典未詳という注が結構多いことに気づきます。発表を前に見落としがあったかどうかを悩むこともなくなるというわけ。