あの日から60年
ある高校の、歴史の授業での一コマ。
原爆投下の話題になりまして、A君が「もし戦争が続いていたら、双方に何百万という被害が出ていたはずだから、あれはそれなりに正しい選択だった」と言いました。先生も基本的に賛意を示していました。
そのクラスにはB君という外国人がいて、普段は授業でも滅多に口をきかない生徒だったのですが、そのときだけは珍しく発言を求めました。B君が意見を述べようとしたことで、先生も含め、クラスの全体が少し緊張したような、そんな感じでした。
B「ここでたとえ話をしたいのですが。この教室には今だいたい30人いますね。今、戦争が起こっているとして、このまま続けば、20人が死んでしまうと仮定しましょう。どの20人が死ぬかはわからない。それはランダムです。そこで、相手国は強力な兵器でA君とその周りの数人を一気に殺すことで、和平を促そうと考えました。A君、このたとえ話をどう思う?」
A「・・・・」
B「A君を含めた数人か、20人か。被害は少なくなるから、A君なら喜んで死んでくれると思うけど」
A君は、「う〜ん、でも、そうなる前に日本は降伏すべきだった」と(いつの間にか、たとえ話から歴史の問題に戻っていたのですが)答えるのが精一杯といった感じで、その後はずっとバツが悪そうにしていました。
でも、それからしばらくしてB君がA君を放課後に見かけることがあって、B君の好きなフットボールチームのユニフォームをA君が着ていたので、それを話の種にしてB君がA君に話しかけると、二人はフットボール談義で意気投合したとさ。
そんな昔話。