「和刻本類書集成」全六冊・所収書目

和刻本(日本で版行された漢籍)なので返り点・傍訓が付されていること、そして、このシリーズ以外ではなかなか目にする機会のない本も収められているという点で、利用価値が高いです。しかし、NACSIS Webcat で検索しても、何が収録されているかという書誌情報がなく、このシリーズの有用性を見逃してきた方々も多いのではないでしょうか。

  • 第一輯
    • 歳華紀麗
    • 書叙指南
    • 事林広記
  • 第二輯
    • 事物紀原
    • 小学紺珠
  • 第三輯
    • 書言故事大全
    • 君臣故事
    • 日記故事大全
    • 金璧故事
    • 勧懲故事
  • 第四輯
    • 群書拾唾
    • 故事雕龍
    • 故事必読成語考
    • 雅俗故事読本
    • 芸林伐山故事
    • 事物異名
  • 第五輯
    • 卓氏藻林
    • 古今類書纂要
  • 第六輯
    • 唐詩金粉
    • 詞林合璧
    • 錦字箋

類書なんてのは、『太平御覧』や『淵鑑類函』のような大きなものがあれば事足りると考える人もいるかもしれませんが、ここに収録されているような、サイズが小さくて、少し俗っぽい類書にも捨てがたい魅力があります。
例えば、特色があるものとして、第二輯『小学紺珠』(第四輯『群書拾唾』も同様の性格の書)は、今まで幾度と役に立ちました。これは「名数」 *1 の収集・分類に特化した便覧で、例えば「魏の文帝(曹丕)の四友」と言われても、それ誰?というときに、この書の第六巻「名臣類・下 名士」を見れば、

  魏四友 文帝
司馬懿 陳群 朱鑠 呉質

と一目で分かります。
あとは、第四輯『雅俗故事読本』。これも第三輯所収の諸書 *2 同様に、よくあるタイプの語彙・故事集成本ですが、巻末の五十音引き索引がありがたい。
また、漢詩の実作をしている方であれば、第五輯・第六輯辺りに収められている類書が便利ではないかと。

*1:数字をつけて、その数だけ同類のものを集めていう語。「三筆」とか「四天王」とか「五山」とか

*2:故事成語を集めた類書でも、それぞれ特色があって、通読すると面白い。例えば『勧懲故事』、これは勧善懲悪の教訓話を中心に収集したもの。