日本最古の回文

おそらくこれではないか、と。

次に、廻文の歌といへるものあり。草の花を詠める歌、
  むらくさにくさのなはもしそなはらばなぞしもはなのさくにさくらむ
これは摂論の尼が歌なり。さかさまに読めば、すみのまのみす といへる事の体に、おなじ歌に詠まるるなり。

(『俊頼髄脳』、引用は日本古典文学全集『歌論集』48頁)
日本古典文学全集本(橋本不美男氏校注・訳)の現代語訳を掲げておきます。

あの雑然と群生している草々の、一つ一つの名前に、外見してわかるように瘡(くさ)という意味がもし込められているのならば、なぜにあのような美しい花をたくさん咲かせるのであろうか

「摂論の尼」というのが誰のことか分からないので、この歌がどこまで遡るかわかりませんが、11世紀頃のものだと考えられます。
ちなみに現代の天才的回文作家といえば、もう大ベテランの域に達した土屋耕一氏。
その名作の一部を。

昼すぎ布団敷かせ、家臣と不義する日
品川にいま棲む住まい 庭がなし
銀行預金なく 六男今日婚儀
堕落妻が居て 家庭が真ッ暗だ