牡丹に蝶(4)

 元祖ふとねこ堂さんの「天狗印 花猫札」には全ての札に猫が描かれているようで、なかなか素敵ですね。ただ、ひょっとすると作者が意図しなかったことかもしれませんが、牡丹と猫だけは「ネタ」では済まない古典的な相性の良さがあります。画題としても一般的です。

牡丹花下睡猫児   正宗賛。方語云、心在舞蝶。

(『禅林集句』)『禅林集句』は、禅宗でよく使われていた漢語や成句(いわゆる、禅語)を集めた啓蒙書『禅林句集』(『句双紙』)の一種。広く親しまれた句であったようですが、私は凡夫なので、こういう公案めいた句は十分に理解できないところがあります。「心在舞蝶」という注*1の意味は、眠っている猫も荘子のように(「牡丹に蝶(3)」参照)夢で蝶となっている、といったことでしょうか。

ぼうたんやしろがねの猫こがねの蝶

(蕪村)

*1:「方語」というのは、禅語の注釈書です。ちなみに「正宗賛」という注はこの「牡丹花下睡猫児」の出典を示しています。「正宗賛」は『五家正宗賛』という、これも当時よく読まれた書ですが、私の見落としでしょうか、異本があるのでしょうか、この句を『五家正宗賛』で見つけることはできませんでした。