菊に盃(1)
菊の10点札、菊花とともに、「寿」の字が書かれた赤い盃。
九月九日、佩茱萸、食蓬餌、飲菊華酒、令人長寿。菊華舒時、并採茎葉、雑黍米醸之、至来年九月九日始熟、就飲焉。故謂之菊華酒。
(『西京雑記』上巻)――九月九日には茱萸(ぐみ)の実を身につけ、蓬餌(よもぎの団子)を食べ、菊華酒を飲むのだが、こうすると長生きができる。菊が開花したときに、茎・葉を一緒に摘み取り、もち米に混ぜて醸造すると、翌年の九月九日にようやく熟成し、それを飲むのである。そこで、この酒を菊華酒とよぶ。
九月九日(重陽の節句)には茱萸の実を身につけ、高い丘に登り、そこで宴会を開いて茱萸酒や菊酒を飲んで長寿を祈るというのが古代のならわしでした。大陸伝来の風習であり、重陽にまつわる説話や詩文も多く残っています。
『西京雑記』の記述によると仕込みの段階から菊花を混ぜて醸造することになっていて、飲兵衛としてはどのような酒なのか大いに気になるところですが、単に、酒に菊の花を浮かべて飲むということも広く行なわれました。