中国古典新書(明徳出版社)

 漢籍をよむときに、全釈漢文大系(集英社)や新釈漢文大系(明治書院)といったシリーズを参照する人は多いのに、「中国古典新書」「中国古典新書続編」(明徳出版社)を知らない人もしくは知っていても参照しない人が多くて驚きました。大変有益な叢書なので、注意を喚起しておこうかと思いまして。

抄録

 軽視されている原因は何かと自分なりに考えてみたのですが、収録作品の多くが全文収録ではなく抄録(ダイジェスト)だからではないかな、と推測しています。体裁も四六判とコンパクトで、見かけ上の「軽さ」もあります。
 抄録が多いというのはたしかに困った事態を引き起こすことがあって、たとえば、

唐詩三百首 (中国古典新書)

唐詩三百首 (中国古典新書)

これなどは『唐詩三百首』のなかからさらに96篇を選んだという「選集の選集」ですから、事情を知らないと紛らわしい。
 とはいえ、抄録であっても参照する必要があるというのは変わりません。

シリーズ全100巻のなかで全文を収録している作品

 全100巻のうち、以下の作品は全文を収録しています。参考までに。「続編」は刊行中なので省略します。

  • 論語 上』『論語 下』
  • 孫子
  • 公孫龍子』
  • 菜根譚
  • 『大学・中庸』
  • 漢書芸文志』
  • 『列女伝』
  • 朱子行状』
  • 列子
  • 『陰騭録』
  • 呉子
  • 『大戴礼』
  • 『太玄経』
  • 『法言』
  • 『書譜』
  • 『五行大義
  • 『牧民心鑑』
  • 『原人論』
  • 易経
  • 『茶経』
  • 『滄浪詩話』
  • 周易参同契』
  • 六韜三略
  • 『孝経』
  • 『射経』
  • 『顔氏家訓』
  • 『帝範・臣軌』

「総索引」の完成を

 このシリーズで唯一残念なのは、当初企画されていた「総索引」(上下二冊の予定でした)が刊行されず、「総索引」の名には程遠い非売品の「索引」(橋本栄治編)が出ただけというところですね。

 増補されれば利用価値は飛躍的に高まると思います。