新出の定家筆「歌合切」(通具俊成卿女歌合)

800年の謎、不明の文意判明 「藤原定家筆歌合切」断簡発見

 鎌倉期の歌人新古今和歌集の選者だった藤原定家(1162−1241年)が、定家のめいで当時を代表する女流歌人、俊成女(むすめ)(生没年未詳)の歌を書き取った新しい断簡(原本の1ページ)が旧伯爵家の旧蔵品から見つかった。この断簡は、途中で文意が途切れ、長年意味不明とされていた東京国立博物館東博)所蔵の「藤原定家筆歌合切(うたあわせぎれ)」の一部と判明。約800年の時を超えた貴重な史料として注目を集めそうだ。(牛田久美)

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/090720/acd0907200105000-n1.htm

 記事では「藤原定家筆歌合切(うたあわせぎれ)」とあって、別にそれでもいいのですが、『新編国歌大観』(第10巻)では『通具俊成卿女歌合』として収録されているので、お間違いのないように。

定数歌編2・歌合編2・補遺編 (新編国歌大観)

定数歌編2・歌合編2・補遺編 (新編国歌大観)

「批評の6行目から突然、「荻(おぎ)の上葉(うわは)」「小野の篠原」などの言葉が登場し、前半と後半の意味がつながらない不可解なものとされてきた」とされるのは、『新編国歌大観』本が振っている歌番号でいうところの、18・19番歌のところです。

  左
はれくもるそらをばしらずこのはちる
おとにたもとはうちしぐれつつ
  右
こがらしにこのはふりしくやどなれば
つゆもとまらぬそでのうへかな
 そらをばしらずこはちる、かからんをりだに左のかちと申さまほしく侍るを、このつゆのたまらぬそでのうへ、猶とこなつ長春花などをよめらんやうににやきこえ侍るべき
 をぎのうはばのかぜのおと、そこぞとききわかれねど、そのふしとも侍らぬをののしのはらも、すずろにいうにいひつづけられて、よそのそでもつゆけき心ちし侍れば、まさると申すべし

 たしかに「をぎのうはばのかぜのおと…」というのは、この18・19番歌とは無関係の判詞ですね。無事に発見されて何より!
 これは勝手な推測ですけど、『汲古』56号辺りで池田氏がこの新出断簡の報告をなさるのではないでしょうか。ここまで大きい話題になったら、もっとメジャーな媒体で発表なさるかもしれませんが。