「下絵万葉集切」
- 作者: 福井淳哉
- 出版社/メーカー: 淡交社
- 発売日: 2013/01/31
- メディア: 単行本
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本書、ほかにも気になるところはあるのですが、ここが一番大きい。「下絵万葉集切」とは別に「下絵万葉集抄切」というものがあるように記述されていますけど、それでいいのでしょうか。
校本万葉集による解説を引用しておきます。
下絵万葉集切
縦二四・二糎(八寸)の茶色の絹の裂地に銀泥、群青、緑青で雲や山、草木の類を下絵に描き、その上に万葉集巻第十九〔四二七四〕の歌を書いた一葉(穂久邇文庫蔵)と巻第二十の〔四三一三〕前後の歌を書いた一葉(五島美術館蔵)とが存する。ともに本文はなく題詞と訓とのみであるが、その訓は万葉仮名からひらがなに移行する中間体、いわゆる独草体の仮名で書かれている。ただし、〔四三一三〕のあとに〔四二九五〕の題詞を書くなど、歌順が万葉集のままでなく、また文字の重複や誤脱もあって、万葉集そのものの断簡とはいえない。筆者は、前者が藤原佐理、後者が小野道風と伝えるが、何れも疑わしい。
(『校本万葉集〔新増補版〕十一』「万葉集諸本並びに断簡類の解説」58〜59頁)〔 〕内の数字は歌番号です。
ただ、古筆切の分野は、素人はまったく手に負えないものでして、次々に出現する新出資料に関しては、そういう情報のネットワークに入っていないと、見落とすことが非常に多い。今回も「二葉」ではなくて「三葉」となっていますし、あるいはそれが何か関係あるのでしょうか。今度『古筆学大成』を見ておこう・・・(古筆切所収情報データベース)。